加江田渓谷の植物たち - より

政野龍雄氏著の 「加江田渓谷の植物たち」 よりの抜粋

P1
双石山は駐車場(丸野)から山に向かって左が徳蘇(とくそ)山、右が双石山であるが、一般には二つ合わせて双石山で通っている。どうして双石山というかというと、この二つの山が重なっているので双石山という説、落合双六という人の名をとったいう説、山に登ると石がぼろぼろと崩れるからぼろいし山という説などがあるが、・・・

P3
 「照葉樹林」というと少し聞きなれない言葉ではあるが、どこにでもある林ではない。年間降雨量が多く亜熱帯や暖帯にあり冬、葉が落ちない常緑広葉樹が山全体を占める割合がとくに大きい林をいっている。別に常緑広葉樹林といういい方もしている。
 具体的には高い木がクスノキ・カシ類・シイ類・タブノキなどが占め、中間にヤブツバキ・サザンカ・モチノキなど、低い木ではアオキ・サカキ・ヤツデなどが主に生えているところをいっている。
・・・「鏡洲のしぐれ雨

P4
 植物は亜熱帯の植物を含めた暖帯林の下の方に生える植物群と、若干の中位のところに生える植物群からなり、その分布は多様で、リョウビンタイ・サイコクホングウシダなどのシダ植物が20科163種、クス・シイ類・タブノキ・カシ類などの顕花植物(花をつける植物の意)115科633種で合計135科796種が数えられる。

P16
 クズは優雅な花とされているが、造林の立場からは大敵で、これに巻かれたスギ・ヒノキの苗は立ち上がれない。茎を切っても丈夫な根が残っている。一本のクズには何千と思われる豆が実り、これが落ちて繁殖して大きくなる。
 このクズは、土砂流出防止のためアメリカから導入され、畑の土壌侵食をくい止めて成功したが、猛烈な繁殖力から一転して被害がめだちはじめた。
 ・・・リーダーズダイジェストには同じアメリカで、クズを緑肥としてトウモロコシを栽培し、多大の効果があったと載ったこともある。
 ところが、クズが大量に生えているところに限って土壌は肥えてスギなどの生長がよい。問題はつる枯らしの方法である。現在、マッチの棒みたいな薬品が開発されて、これを茎に挿し込むだけで枯らしてしまうものができている。

 上記の文中に「このクズは、土砂流出防止のためアメリカから導入され」との表記があるが、同じ著者の書かれた「似た植物のちがい」という本の中では「日本からアメリカに渡った植物のひとつがクズである・・・」という表現がある。前後の文脈から推察すると日本からアメリカに渡ったとの解釈がふさわしいと思われる。

P17
 ヤナギイチゴは、名前だけではキイチゴやフユイチゴなどのイチゴの仲間のように思われるが、実はイラクサの仲間で、渓谷に生えているハドノキと兄弟分である。


P18
 クマヤナギが巻きついているのがミズキである。ミズキは落葉の大木になる木で樹液が多く、春先に枝を折ると水がしたたることから水木という名がついている。枝は車輪状に広がり、冬の間は紅色を帯びて、葉はたがいちがいについて枝先に集まっている。5月頃、白い花を枝いっぱいにつけるので、遠くからでもミズキとわかる。
 これに似たクマノミズキ(熊野水木)というのが同じ位の大きさである。ミズキの葉は互いちがいについているのに対し、クマノミズキは対(つい)について葉が細長いことと支脈が多い(ミズキ≒10 クマノミズキ≒6)というちがいがある。
 樹皮をけずってみると、ミズキは内皮が白く材色も白いので、方言でシロミズシといっている。一方、クマノミズキは内皮が赤味を帯び材も幾分赤みを帯びているので、方言でアカミズシといっている。
 現在、木材市場などに出てくるミズキは、材が白く柔らかいので一般家具用材のほか、コケシ・ラケット材として利用されることから売行きがよい。一方クマノミズキの方は、材の赤味がシミのようになるので、ミズキより一段安く取引きされている。

P20(唐傘淵の章)
 また、スギ山の道ばたにカジノキが生えている。今まで見たのは、せいぜい高さが3〜4mものだが、ここのは高さが10m位ある。宮崎で野生種と思われるものは私も見ていないが、昔、製紙原料とするために栽培されたものが野生化したものと思われる。葉は広卵形をしているが、3〜5に切れ込みのあるものなど変化がある。托葉という、葉の付け根にある葉が紫色を帯びる特徴があるが、早く落ちてしまう。実は赤く熟してクワの実に似ている。

P22
 このあたりの民有地山林の境界には、ほとんどホウライチクが植えられている。散歩道のかたわらにもあるが、駐車場からみた山並みにも境界木としてのホウライチクがみえる。
 九州では一般にキンチク、またはチンチクという方言で通っている。このことは棹(幹)は日光にあたるところは金色になることから、あるいはこのタケは孔が小さく、水に沈むことからの方言と思っている。
 もともとは中国原産であるが、現在は野生化し、宮崎市内海などの小河川の堤防にはいくつかの杭を打ち、その間にこのホウライチクの根のついた棹や枝条をS字形にからませて、内部に土を盛っておくと各節から根と芽を出して竹林となり、堤防を洪水かの被害から保護している。
 ホウライチクはバンプーの類で、地下茎が横に走って竹の皮が落ちるモウソウチク、マダケといったもの、また、竹の皮がいつまでもついているヤダケ(方言ではシノメ)などとちがって地下茎がなく、棹が株立ちになり根が横にはしらないという特徴と、株分けが簡単にできるという特性を生かしたものである。
 また、この棹で打った縄は柔かく、圧しても乗馬で走っても火が消えないことから、火縄銃の火縄に使われた。九州南部では門構えの家にすばらしい沈竹壁があって、よく刈り込まれているのは、当時の歴史を物語るものである。
 名前のいわれとしては、正月の松竹梅として蓬莱飾りに使うので、この名前がついている。

P25(八畳岩の章)
 ゼンマイは重曹を入れた熱湯でしばらくゆでて、一晩、水にさらしてアクを抜く。ワラビは、おけなどにワラビをならべ、灰をかけた上から熱湯をそそぎ、そのまま一晩おいてアクを抜く。・・・・

P25
 左手川すじにはウシコロシが生えている。この木も割と多い。「牛殺し」という物騒な名がついているが、牛は鼻に輪を通して綱をつける。子牛のとき牛の鼻の障子にこのウシコロシの枝をとがらして穴をあけることから、このような名前がついている。・・・・・
 材はねばりがあり、曲げてもすぐに折れないというしなやかさから鎌の柄にによく使われる。このようなことから、一名カマツカともいわれている。カマは鎌であり、ツカは柄である。・・・・
 大きくなっても径が5cm位止まりである。現在は鎌の柄よりも石工さんが使う玄能の柄にに使われることが多い。方言でユノスといい、宮崎市内では・・・・・。

P25
 トベラは、渓谷の加江田川が日向灘に注ぐ青島などの海岸に主として自生するが、暖かいこともあってここまでさかのぼって生えている。葉も木の皮も根も、一種特有の悪いにおいがすることからよく知られている。二月の節分に枝を扉にはさみ、鬼よけと使ったので、扉の木からトベラと呼ぶようになったといわれている。

P36
 ハシブトガラス 普通のカラスよりくちばしが太く、おでこがでっぱっている。
 ホオジロ ほほが白く、スズメぐらいの大きさ、
 カワラヒラ 翼に黄色の斑点がある。
 ヒヨドリ 春はツバキの蜜を吸い、秋は学校のセンダン・クロガネモチの実を好んで食べる。
 カケス 人まねがうまく姿は美しいがこえは良くない。宮崎地方ではゲジンボとかゲジという名で呼ばれている。
 イカル キーコ、キーと、澄み切った美声で鳴く。
 ホオアカ チッと低い声で鳴いて、ほおが赤い。
 ヤマガラ おみくじ引きに利用されて栗色が目立つ。
 シジュウカラ 黒い帽子に白いシャツ、白えりに黒いネクタイ。
 エナガ 十円玉二枚の重さしかなく尾が長い。
 サンシュウクイ 飛びながらヒリヒリツと続けて鳴く。
 アオバト アーアオーと鳴いて姿が青い。
 シロハツグミ ツグミの一種で腹が白い。
 アオゲラ キツツキのなかまで背が青い。
 メジロ 目のまわりに白い輪のある。
 ウグイス
 トビ くちばしが強く大きい。
 サシバ トビより小さく、カラス位の大きさで広葉樹林にすむ。
 セグロセキセイ 川筋に多く住んで、尾を上下に振って、尾が苦く姿勢が良い。宮崎ではイシタタキと、他のセキレイも含めて方言で言っている。
 セキレイ 川面を水平に飛ぶ。
 ヤマセミ 渓流の崖に巣をつくる。
 カワセミ 背がコバルト色の羽根をして川面を飛ぶ。
 コジュケイ チョットコイといって里の竹山に多い。
 コシジロヤマドリ 姿がきれいな県鳥。
 
P44
葉をさわると、ムラサキシキブは葉がざらつき、ヤブムラサキは葉の裏に軟毛が密に生えているのでビロードのような手ざわりである。

P47
ホソバタブは一名アオガシともいわれるが、方言ではシロタプ、またはセンコウタブといっている。・・・線香の材料として樹皮や葉がタブノキより質が良いということから、センコウタブという・・。

P52
サルナシマタタビに似ているが、葉がやや大きく、つるも丈夫である。そのちがいを参加者に葉をかんでもらって区別している。マタタビの葉は少し辛く、サルナシは辛くない。・・・・サルナシのつるは、丈夫で腐りにくいので、昔から紐として利用されてきた。いかだをしばったり、つり橋の材料にもされた。・・・祖谷渓のつり橋はこれでつくられている。

P59
イヌビワ・・・、宮崎地方では方言でムシブテ、あるいはウシブテといっている。ウシブテはイヌビワの樹皮の繊維が強いので、この枝で牛の尻を叩くことからきていることと、葉の姿が牛の額ににていることから、このような表現が生まれてきたものであろうといわれる。

P78
エノキ・・・・、昔の一里塚に植えられたり、畑の休憩場の庇陰木に植えられたり、また、よくお城にも植えられている。・・・木が高く伸びるのでそれに登って物見をする役目と、球形で橙色に熟した実は甘く、食用になること、もうひとつは、万一籠城した場合、生木でもよく燃えるので燃料として使用するなどの多目的から考えられる。エノキの樹皮はシワが多い。・・・・

P82
ムベの葉は、はじめは一葉で、成長するにしたがって三葉・五葉・七葉と掌状になってふえ、七葉の成木になってはじめて実がつく。

P95
遊歩道の川筋にビナンカズラも生えている。このかずらはモクレンの仲間で、つるをたたいて水につけると粘っこい汁が出る。この汁で頭髪を洗うと美しい男になるということから、美男かずらという名がついている。・・・一名サネカズラともいう。

P97
イタジイは一名スダジイともいわれている。また、コジイ(ツブラジイ)の樹皮とイタジイの樹種の中間的なものとして、方言ではニタリジイという木があるが、これはイタジイの変種だと思っている。コジイの寿命は割と短くて50〜70年ぐらい、一方、イタジイは長寿で2〜300年ぐらいで潮風ゆ乾燥地にも耐えてたくましく育った木である。

P104
アカメガシワは、天然林などの成熟した山にはなく、山が成熟する過程の途中に栄える木である。山の木を切ったあとには、まずヤクシソウ・アキノノゲシ・ベニバナボロギグ・ススキといった草が生え、それらのあとにタブノキ・カシ類・シイ類といった常緑広葉樹が生えてくる。

P119
ウバユリが渓谷入口のスギ山の中、硫黄谷の谷間にも生えている。・・・・ウバユリがたくさん生えているところは、林業上からは弱湿性褐色森林土という土壌で、スギ造林生育優良を示す適地として、そのよさを示す指標植物のひとつである。

P120
アオキ・・・、人に愛される潅木の照葉樹のひとつである。第一に庭園に観賞用として栽培される。・・・・第二は薬用である。生の葉を民間では火にあぶりあるいはもんで、どろどろにして、はれもの・やけどにも使われる一方、痔や「よう」の薬にも使われる。第三は牛の飼料である。ついこの前までの農家は、方言でアオダケといい、冬は葉が枯れて草が少ないので、アオキの葉も若茎とともにとって、牛に食べさせていた。乳牛は乳の量が多くなるといわれている。・・・第四は、この木で立派な箸ができることである。・・・・・ここでアオキの箸を使うと中風にならないという話から、平川さんに箸をつくってもらったことがある。

P125
ウラジロコシダも群生するシダであるが、最も乾燥した土壌を指標する植物である。ウラジロの群生地は、ヒノキまでは植えられるが、コシダの群生地は乾燥が最も強く、人工造林地としては適さない。

P132
ヤマハゼの材は大弓といわれる弓のしん材に使われる。この適材は少なく、木材市場などにも市売用として出品されるが、末口径が28cm以上ないと使いものにならないといわれている。・・・・硬すぎる真中と、柔らかい辺材部を除いたものが、弓の材料となり得る。

P139
キブシの花が咲く頃が、その土地のスギの植え付けの適期といわれ、その時期を示してくれる指標植物となっている。

P147
ヤマビワ・・・・、木材としては、木刀や織物用木管として優れているが、量としてまとまらず、あまり利用されていない。木刀は現在、カシとイスノキが主で、木管としてはツバキが利用されている。伊勢神宮で使う火は、ヤマビワとヒノキを摩擦して発火させるといわれている。

P153
タイミンタチバナ・・・・、昔は幹をそのまま槍の柄に使ったといわれている。材にねばりがあり、晩秋の頃、紫黒色の実がつく。


Commented by おっしー at 2018-11-23 16:55
こんにちは。
こんな本があるんですね!
面白そう!
本屋さんにありますか?
Commented by mutumi48 at 2018-11-24 08:22
昭和62年発行です。
新刊本としては売っていないのではと思います。
古本として、見つけることができればと思っています。
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by mutumi48 | 2020-01-01 09:52 | 双石山の樹木 | Trackback | Comments(2)

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