双石山は一般登山道に関しては案内板が設置してあり「道迷い」は起こしにくいと考えているが、それでもたまに「道迷い」をしてしまったという話を聞くことがある。毎週末登っている私にとっては迷うことはない場所、また勘違いすることのない所でも初めての登山者にとっては迷ってしまうことがあるようだ。
それを防ぐにはどうすれば良いのか、ある意味、いたって簡単なことかもしれない。初めて登る山については事前に、地図・ガイドブック、そして現代はネット社会でありネット内で十分な下調べをしてから登れば、まず「道迷い」することはないと考えている。
おそらく、それでも「道迷い」をする登山者がいるのだろう。そこで今まで「道に迷いました」という登山者の話を参考にしていくつかの「道迷い」しやすい場所について紹介する。
□ 1 イワヤ神社と天狗岩との間
□ 2 天狗岩の裏
□ 3 大岩の取付き
□ 4 第二展望台から第三展望台へ
□ 5 下山途中の尾根筋登山道
□ 6 ステンレス三段梯子から象の墓場へ
□1 イワヤ神社と天狗岩との間
(2020年9月10日ブログより)
赤木さんより平日に登った時に出会ったという滋賀県から見えた男性のことについて話を聞く。この方植物に興味があり、加江田渓谷には来たことがあったが、双石山にはその時にはじめて登ったらしい。そしてどこでどう道を間違えたか最初にたどり着いた場所が第三展望台だったらしい。その日の双石山での登山者はおそらく二人だけで赤木さんに出会えほっとしたらしい。山中の植物に関心があるようで手元にはたくさんの資料(コピー)を持っていたらしい。
最初に、案内板のある場所が第三展望台ということは、おそらくイワヤ神社から天狗岩へ向かう途中で石炭山へ繋がる踏み跡に入ってしまったのではと思われる。過去に数人から同じ踏み跡に入り石炭山と双石山との間にあるV字谷から急登を双石山の尾根筋に登り、第三展望台を経由し第二展望台にたどり着いたという話を聞いている。
いつも登っている人であれば「あんなところで迷う?」と思うが、イワヤ神社横をしばらく過ぎると土の登山道から岩や石の登山道になり、それまで足元に目をやる必要がなかった状況から、一変し一歩一歩をどこに足をのせるのかを気にしなければいけなくなる。本来は右に進むところをわずかな距離だが前に進み、そこにある立入注意の黄色テープで立ち止まり、左側の山肌にしっかりとした踏み跡を見つけ、そちら側に登ってしまい、途中常連の方が取り付けた赤テープがあり、ついそれに頼ってしまう。結局は双石山の常連が使う山道へと進み一般ルートから大きく道を外してしまうのである。
□2 天狗岩の裏
双石山の最大のビューポイントは天狗岩、そしてここから登山道は一気に急峻な道となる。天狗岩に向かって右側に正式ルートがあるが、ここは木の根とロープを頼りに登ることになる。それまで足で登ってきたのが、両手を使わなくては登れない。
上がりきった所で天狗岩を振り返ることを勧める。表の表情(タフォニー)とは全く別な表情をしており、しばらく見入ってしまうことになる。
最初の「道迷い」がここであり、山に向かって右側に人がしゃがんで通れる穴があり、そこが一般ルートとなる。ただ、山にそのまま登ることもでき、登っても右側に見える窪地(ここが空池)に下りれば良いのだが、そのまま左側に登ってしまう登山者が結構多い。
そこは行き止まりとなり、すぐに「道迷い」をしたと気づき、窪地へ下りることになり、そう大事にはならない。行き止まり箇所の絶壁の岩肌をよく見ると「アブミルート」と彫りこんであり、昔はここもロッククライマーの練習場だった。
天狗岩右側の急登

天狗岩の裏側
天狗岩の裏側から空池に下り、チョークストーンの下を通ると、私が「王家の谷」と呼んでいる登山道となる。そのまま登ると「尾根コース」「谷コース」との案内板が見えてくる、初めての方はほとんどが尾根コースを選択する。
尾根コース最初の取付きはステンレスハシゴ、そしてロープヶ所とつづき、ここを上がると大岩が見える。大岩手前には2〜3歩で渡れる木製の橋があり、それを渡ると大岩へ登るためのロープが下がっており、ここを登ると大岩天辺へアプローチできる。
それまで展望の全くない第一展望台、そして暖帯林の見晴らしのない樹間を登ってきたが、大岩天辺に上がると一気に視界が広がり、宮崎市街地から尾鈴山から西へ伸びる県央の稜線、そして日向灘(太平洋)を望むことができる。
「道迷い」は展望を楽しみロープを下りた後、渡ってきた木製の橋を渡らずに反対の方向へ行ってしまう登山者がいる。私も以前ここで休んでいるときに、反対方向に進んでいった男性を見かけた。
そのルートを下ると、大岩下の隙間(4〜5人は泊まれるほどの広さがある)があり、それを見に行ったのか、よほど双石山を熟知しており、その先の非常にマニアックなルートを下りられたのかと思った、そうでなければ引き返してくるだろうと思い、待っていたが一向に戻ってこない。正直その日は山中、その人のことが気になった。後で山友から聞くことになるが、その男性は大岩の下を一回りし無事に尾根コースを登って行ったらしい。
「道迷い」をしないためには、大岩から尾根コースに進む木製橋をまた渡り、そのまま山に登っていくことになる。ここから15分ほどが数カ所のロープ、そして木の根を頼りに体全体を使って登るルートになり、初めての人で、登りきった第二展望台で「もう尾根コースは下りたくない」と言われる方がいる。
大岩 木製橋を渡りロープを頼りに登ると視界が広がる。

大岩を下りた後は、写真正面の尾根伝いに登っていく。
尾根コース、谷コースは上部で繋がり、尾根筋に上がり、道なりに進めば山小屋を経由して山頂へのルートとなり、そこを左に少し登ると第二展望台となっている。ここからの展望は山頂からの眺めより良いのではと個人的には思っている。ここでの「道迷い」は第三展望台への案内板による。普通、第一、第二、第三、そして・・・と続き山頂となるのではと思う人がいてもおかしくない。
第二展望台を始め登山道には数カ所にマップ案内板があり、その地図をよく見ればわかることだが、第二展望台の後に第三展望台へ行かれる人がおり、第三展望台で気が付き引き返せば良いのだが、そのまま尾根筋登山道を進まれ、加江田渓谷側の登山道を麻畑まで下りて、そこにある案内板を頼りに山頂をめざし尾根筋登山道の三叉路に登ったという人と数組出会っている。
第二展望台から山頂に向かうには一度登った坂道を下りて尾根筋登山道を進まなければいけない。
山頂まで登り、下山することになるが、できれば尾根筋登山道脇にある山小屋で休憩するのが良い、山小屋北側には展望の良いテラスがありテーブルベンチが設置してある。
ここは他の登山者との出会いの場ともなり、常連の登山者と出会えれば双石山のいろんな情報を聞くことができる。山小屋を出発する時には、山小屋前の案内板をじっくりと確認することを勧める。
山小屋を出て最初のピークを下りきったところが「道迷い」の場所となる。尾根筋の比較的広めの登山道をそのまま歩いてしまうと、加江田渓谷側につながるルートとなる。
本来はピークを下った所で、左側に下りなければいけない。踏み跡もしっかりと付いているので迷うことはないと思うが、以前、私も何か考え事をしており、そこを下りずにまっすぐと尾根筋の道を進み、途中で気がついたことがある。
そのまま5分ほど行けばT字で加江田渓谷側から双石山尾根筋登山道につながる登山道と合流するので、そこを左に少し登り気味に進めば本来の下山ルートにつながるが、そこを右に下りていくと、加江田渓谷側の登山道に入り込んでしまうことになる。
毎年数組の登山者がここで迷っている。登山道を進めば加江田渓谷側の遊歩道に下りることはできるが登山口が別なところになり、その後長時間県道を歩いて登った登山口まで行かなければいけない。
左側に案内板はあるが、ついつい見過ごしてしまう可能性がある

□6 ステンレス三段梯子から象の墓場へ
2022年2月1日に修正された「宮崎自然休養林エリアマップ」には、それまで表示のなかった「象の墓場」へのアプローチが拡大版の中で表現されている。
象の墓場への案内板については、以前からステンレス三段梯子取付きにあったが、「宮崎自然休養林エリアマップ」で紹介された後、空池からチェックストーンを潜り抜けた登山道に一旦ステンレス三段梯子を下りるように案内板が設置されている。
以前からネットで多くの登山者が象の墓場について情報をアップしており、はじめて双石山にきた方でもアプローチする登山者はいたが、正式ルートとして表示されてから、このアプローチで道迷いをしたという数組の登山者と出会い話を聞く機会があった。
道迷いの原因は象の墓場入口近くに設置してある「象の墓場」という案内板が分かりづらいことである。本来は踏み跡の三叉路部分(表示無し)に設置してあれば分かりやすいが、三叉路から象の墓場側に設置してある。
「宮崎自然休養林エリアマップ」では、ステンレン三段梯子取付きからの所要時間は15分(0.2k)となっている。10分と少し歩き、本来左に曲がらなければいけない所を踏み跡を頼りに道なりに進んでしまうと行き過ぎとなる。
登山者によっては、そのまま昔クライマーがチャレンジした北壁、学院ルート、カンテの下を通り、行者コース入口となっているルンゼの遭難碑まで進んでしまったという話や、双石谷を下り県道27号線のルンゼ登山口に下りてしまったという話まで聞いたことがある。
私がはじめて象の墓場へアプローチしたいという登山者にアドバイスする時は「ステンレス三段梯子取付きから20分歩いても着かない時は行き過ぎており、そこからきた道を引き返せば途中で正面にそれらしき空間を目にすることになります」と説明している。
一般登山道以外の踏み跡には登山道の道標ピンクテープが付けてあり余計に紛らわしい。山中には個人的に設置されたピンクテープが多々あり遭難の原因にもなっているので、くれぐれも気をつけなければいけない。
象の墓場へのアプローチには楽しみがある。まずは最初の急登を上がった所にあるタフォニー形状の大きな岩壁に化石(生痕化石)が見られる。双石山は海底の地層が隆起した山で山中で多くの化石を見ることができる。
2023年3月16日に収録(撮影)されたNHK「にっぽん百低山」で私はガイドを務め、事前にプロデューサーから一般登山道途中の岩壁にある化石を紹介してほしいとの依頼があり、事前に調査したところこの場所に数個の生痕化石を見つけていた。
収録当日にこの場所で吉田類氏と山田キヌヨさんに山の成り立ちと合わせて化石を紹介することになり、その場面がテレビで放映された。
次の楽しみは、この岩壁から続く細い登山道10mほどの区間がアリドオシの群生地となっている。別名一両とも言われるアリドオシは双石山を代表する樹木(低木)であり、4〜5月に白い花を付け、その後赤い実を付ける。
次に現れるのはナギ林で、林というほどではないが山中でのナギノキは珍しく、その内の一本の根元に双石山の妖精「ナギちゃん」が佇んでおり、象の墓場の岩壁の象達と同じように見える人だけに左手をあげ微笑んで迎えてくれる。
ステンレス三段梯子取付き 「象の墓場」への案内板

象の墓場手前のナギ林
ナギ林に潜む「双石山の妖精・ナギちゃん」
象の墓場を見下ろす