南郷村物語 9 想いづくりの風景 ⑵
2021年 03月 01日
1993年1月8日、南木曾での御木曳式は全国放送で広く紹介され、それを見た南郷村の多くの人は、事の大きさを実感する。
1月11日、当日1,000人の村人が参加し、見学人も含めると1,500人。実に村の人口の半分以上の人が集まったことになる。束柱、校木などを5台の台車に積み、猿田彦を道案内役に、「西の正倉院」と染め抜かれた鉢巻きをした保育園児からお年寄りまでの人が台車の綱を引っ張った。
村人による木挽き唄や木遣り唄の中、木材加工場までの道のりを進むことになる。1時間30分かけて到着した村人の顔は参加の軎びとこれから始まる工事への期待であふれていた。「この日、村は一つになった」とよくいわれる。その後、工事の進行に合わせて、手斧始め式、柱立式、上棟式と多くの村民の参加のもとおのおのの行事が行なわれた。
「西の正倉院」は1996年5月2日に落成の日を迎える。式典の中、あいさつに立たれた鈴木嘉吉氏(前奈良国立文化財研究所長)は「西の正倉院は平成の文化財である」といわれた。「子々孫々に誇 りうる南郷村」の村おこしは大きな一歩を踏み出すことになる。
私は百済の館の工事途中にして独立し、その後、百済の里づくりに関する計画・設計・工事に深く関わる機会を得ることができた。南郷村の風景づくりという中で、伝説を、交流を、伝統を、挑戦を、そして村人の想いをおのおのの建物にこめていくという取り組みに参加し続けられたことに感謝する。


