双石山 2023年1月21日 登山道整備

 金曜日、友人の金丸君へFaceTimeで連絡を入れると、折り返し連絡があり27インチモニターに自宅で寛ぐ友人の顔が映し出される。まずはお互いの近況について情報交換、二人とも60代後半になり話題のほとんどが体のことで話が進み、週末久しぶりに一緒に双石山に登ることになる。日曜日の天気予報が曇りと雨マーク、土曜日は晴れマークということで近頃朝起きるのが辛くなったという金丸君の提案で土曜日の9時00分に待ち合わせ登ることにする。

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 8時55分に小谷登山口に到着するとたくさんの車が止まっており、東端にすでに金丸君の車が止まっている。登山口前をスルーし上の空地に行くがここも車が一杯で、引き返し登山口東端で縦列に駐車、路面に勾配があるために車止めを後輪に設置する。この車止めは山友の松元氏の手作りで、松元氏は長年の仕事経験からか平地でも長時間車を止める時には車止めを使われる。

 9時10分前に登山口をスタート、最初の急登を上がり重機道合流地点にリックを担いでいない女性3人の姿がある。山友の蛭川さん、山本さん、大住さんで足元には数本の防腐処理をした木材が置いてある。今日は小谷登山道の整備の日で、8時30分から30人以上の人が、登山口から自然林が始まる分岐点までの登山道で足場の悪い所を整備しているとのことで、すでにほとんどの材料は決められた場所に持って上がられている。残っていた木杭2本とステップとなる角材1本を持って上がることにする。

 親子岩手前で最初に出会ったのは川越氏ともう一人の男性、丁度木杭をハンマーで地面に打ち付けている最中であった。川越氏とお会いするのは久しぶり、挨拶を交わし付近に持って上がった木材を置き、そのまま登山道を登り、犬岩横の平地に着くと、そこから見えるカエル岩までの急登にたくさんの人が登山道整備をされている。すべての人を知っているわけではないが、日向わらじ会、双石山木曜会の人達の姿もあり、少々心苦しい思いをしながら作業をされている中を「お疲れ様です」と声をかけながら先に進む。

 整備されているヶ所を見ていくと、関係者の用意周到な段取りに感心させられる。補修が必要な場所は、そこの道幅、段差とそれぞれにマチマチであり、事前にその場所に合わせた大きさの材料が準備してある。

 カエル岩の所で地元の渡辺氏と出会い「ルンゼ登山道の切石はどこで使われているか知っている?」と聞かれる。ルンゼ登山道は正式なルートではなく「双石谷」の東側を辿りルンゼ遭難碑のある岩壁近くまで続くアブローチのことで、県道27号線から入るとすぐに自然林の中を登ることになり「象の墓場」を経由し小谷登山口からの一般登山道に繋がり比較的踏み跡もしっかりしているので利用する登山者も多い。

 「双石谷」という名称は聞き慣れない人が多いのではと思っているが、以前、双石山周辺の地図にその名称が使われているのをみかけ、それ以降「双石谷」と呼んでいる。この登山道そして谷筋の岩場に石を切り出したクサビなどの痕跡が至るところにあり、そして登山道脇には石を成形した時にでたのではと思われる形の整ったものが数多く見受けられる。

 双石谷に残っている石の切出し跡について教えてくれたのは双石山探検隊のメンバー達、そしてその石がどこで使われたのか気になり色々と調べることになる。この周辺には清武町黒北に溶結凝灰岩の切出し場があり地元では「灰石」として至る所で使われている。

 双石山は海底から隆起しており砂が固まってできた砂岩や礫岩の岩場であるが、ここの砂岩が周辺で使われているという話はそれまで聞いたことがなかった。仕事柄地元木材を地元で使うという産直をテーマとして取り組んでいたので、どこか近くで使われている可能性が高いと思い、ネット上で関係する情報を検索していたところ県道27号線整備に関する古いレポートを見つけ、その中に以前の県道が整備される時に、山中の谷が道を跨ぐときに作られた水路(暗渠)にここの石が使われていたという情報を目にし、そのことを探検隊のメンバーに伝える。

 早々に探検隊メンバーが県道27号線の下を通るたくさんの水路(暗渠)に入り現在も残っていることを直に確認した。このことは地元の渡辺氏も知らなかった。合わせて家一郷の「たたら製鉄」についても話をすると、とても興味を持たられ様子で、いつかきちんと現在まで知り得た情報を伝えなければと思う。

 渡辺氏からは椿山公園手前の携帯電話アンテナ付近の県道沿いに明治37年の石碑があるので一度確認してはと話がある。県道27号線にある山仮屋隧道は明治25年(1892年)に開通しているので、その後の県道整備の中で建てられた石碑なのかもしれない。山仮屋隧道は内部にレンガが使われており、側壁部をイギリス積みの手法が、アーチ部には長手積みの手法が採用された珍しいトンネルとなっている。またトンネルの両サイドの出入口には切石が使われており、その石が双石谷から運ばれた可能性もある。

 カエル岩横で渡辺氏と話し込んでいる内に金丸君は先に進み分岐点で待っていてくれる。小谷登山道分岐点に9時40分に到着し、ベンチにリックとカメラバックを降ろして休憩する。スマホを取り出しここからの風景を撮りスマホのラインを使い自然が大好きな母親とグループ双石山に送る。

 先ほどカエル岩で長話をした渡辺氏と松崎保忠氏が登ってみえる。松崎氏は以前地元の宮崎日日新聞の長期シリーズである「自分史」でご自身の山行について、北アルプス縦走、マッキンリーでの凍傷経験、そして双石山での様々な取り組みについて紹介されており、連載終了後に「私の山幸人生」というタイトルの本として出版されている(この本はPORTALという宮崎市内のアウトドアショップで販売されている)。

 二人は登山道の整備がほぼ終了し、分岐点から5分ほど登ったところにあるイワヤ神社補修打合せのために登られてきたらしい。今年初めての金丸君の神社参拝を兼ねて二人の後を付いていくことにする。イワヤ神社は地元の人が、昔々のある年に起こった日照りの時に雨請い祈願のために建てられたと聞いたことがあるが、その真意は定かではない。この地域の雨にまつわる言い伝えとして「加江田の私雨」という表現があることは山の大先輩に聞くことができた。

 地元の方達によって守られてきた神社だが、ここ数年建物の痛みがひどく屋根からの雨漏りのため一時期は床板が腐っていたが2年ほど前に張り替えられている。ただ肝心の屋根の補修がまだ行われておらず地元の方から補修をしたいと双石山探検隊に相談があり、探検隊メンバーより私に声がかかり、いつもお世話になっている探検隊なので、現状把握のため一緒に建物調査を行い私の方で建物を図面化している。

 建物の調査を行ったのは2020年の10月31日この日は小谷登山道周辺に多くの関係者と一緒に様々な木を植樹をした日で、植樹後の集合写真撮影が終わったあとで、探検隊メンバーのオッシー とその娘(なっちゃん)の三人で建物を測った。その後図面化してペーバーを渡しており、いつ補修がはじまるのかと気になっていた。

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 建物補修は早いほうが望ましいが、取りまとめを誰がやるのかは慎重に考えたほうが良いのではと思っている。地元の方達が建てた神社なので地元主体で行われるのが良いと考えている。

 イワヤ神社を過ぎた道路脇に腰の高さほどのコショウノキがあり丁度満開状態でほんわかと香りを漂わせている。天狗岩下のルートをトラバースしてステンレス三段梯子取付きに到着、ここをそのまま真っ直ぐに進むと象の墓場にアブローチできる。最も新しい双石山のエリアマップには新たに象の墓場へのルートが記入してあるので、墓場を楽しむ人が増えたようだ、ぜひ墓場の岩に潜む数頭の象(私は6頭確認している)を探してほしい。

 ステンレス三段梯子を登り王家の谷に入り、10時20分に岩の上四兄弟の定位置にて休憩する。山行が久しぶりの友人も、途中途中での様々な人たちとの出会いにより時間はかかっているが比較的ゆっくりとしたペースのためさほどの辛さを感じていないようだ。

 見知らぬ一人の男性が登ってみえ上からになるが声をかけ挨拶を交わす。しばらく休憩後に登山再開し谷コースを選択し次の休憩場所はロープヶ所取付き、ここまで10分たらずの行程だが山中で最も急斜面を登るルートになるためほぼ中間となるここで必ず休憩する。

 上から常連の長友さんが下りてくる。毎週末必ずと言っていいほど谷コースのどこかで長友さんとはお会いする。今日は土曜日、明日日曜日が雨予報のため今日登ることにしたが、おそらく長友さんは明日も日中に雨が降らなければ登られる。

 10時50分過ぎに第二展望台に到着する。リックとカメラバックをテーブルに置き、まずはここから見える宮崎平野をパチリと撮る。今日は快晴だが視界不良で県央の稜線は見えず、宮崎市街地上空は霞んでいる。ここで金丸君よりドリップコーヒーとビスケットをいただく。チョコの入った味とコーヒーとの相性が良く暖かさもありとても美味しい。

 岩倉さんが一人でみえ今年臼杵の石仏で会ったという私と仕事上の付き合いのある川越氏について話をされる。岩倉さんとはお友達と一緒にいる時にお会いすることが多いが今日はお一人、駐車場でお会いした都原さんとは幼なじみということで、どこかで会えるのではと楽しみにしているとのこと、おそらく尾根筋登山道を山小屋をめざして進めばどこかですれ違いますよと、しばらく一緒に山小屋をめざして進むことになる。レスキューポイントの次のピークを過ぎた所で下山途中の都原さんと出会い、岩倉さんは都原さんと一緒に下山されるというこでここで別れる。

 11時30分に山小屋に到着し早々に囲炉裏に火を入れる準備を行う。ベンチ下にはたくさんの薪がストックしてあり囲炉裏に敷き並べられたレンガは前回(1月15日)私が並べたままなので、薪だけをどなたかがストックしてくれたようだ、感謝。

 火が起こり鉄網にホイルに包んだサツマイモを並べた頃に下山途中という女性二人がみえしばらく一緒に囲炉裏の火を囲み談笑する。二人から以前お会いしていますとのことで、お名前を聞くと内野さんと池上さん、登山慣れしたスタイルからいろんな山に登られているよう「後40分ほどで芋が焼き上がりますのでいかがですか」と声をかけると「次回の楽しみにします」と山小屋を出て行かれる。

 男性一人がみえ一緒に囲炉裏を囲む、この方より昨年の10月2日に山小屋でお会いし一緒に下山し象の墓場を案内していただきましたとのこと、再度お名前を聞くと高鍋町にお住まいのもりみつ氏で福岡在住の時からいろんな山に登られヤマップに山行を紹介されている。

 確かに10月2日は「山小屋焼き芋オープン」の日で小谷登山口でオッシー に出会い、一緒に登った第二展望台では小八重氏に出会い、三人山小屋で一緒に過ごしその後は下山途中でもりみつ氏を象の墓場に案内している。双石山に登るのは前回以来らしい。

 外から小さい女の子と小学生くらいの男の子の声が聞こえ、山小屋の扉越しに5才くらいの女の子が姿をあらわす。「どうぞ」と手招きをすると親子4人の家族が入ってくる。少しの時間囲炉裏で暖をとり外のテーブルベンチでランチをとられる。

 ヤキイモができたので一個だけだか持っていき「良かったら食べませんか」と置いてくる。ランチ後に二人の子供がお菓子を手に持ち「どうぞ」と小屋に入ってくる。両親もみえたので鉄板で炙った銀杏を食べていただく。

 このご家族は井上氏一家で双石山は初めてだが県北に住んでいた時には東郷町の冠岳などにも登り昨年は屋久島にも行かれたらしい。長男がそうた君、娘が小春ちゃん(5才)で、今から山頂に行きまた戻ってくるらしい。

 もりみつ氏が山小屋を出ていた後に男性一人が入ってみえる。話を聞くと宮崎大学工学部の修士1年生の熊谷氏で、現在、就活のこともありこれからの進路のことで色々と考えることが多いらしく「これから社会に出るにあたってどのように進んでいけば良いのか、何かアドバイスはありませんか」と突然聞かれる。

 思わず自身の経験談として、修士終了と当時に資格を習得し東京での就職ではなく郷里宮崎に帰り働くと決めた時に、自分自身に言い聞かせ、そしてお世話になった人達に手紙を書いたことについて話をした。それは「宮崎県でしかできないことをやろうと強く思った」ということ。

 それが、何かはその時には全くわからなかったが、そう強く思い帰郷し、仕事や建築士会などの活動に取り組んでいるうちに、様々な出会いがあり、結果、素晴らしい取り組みに参加でき、それは現在も建築という大きな範囲の中で形を変え継続している。とついつい長話をしてしまった。

 14時45分に囲炉裏の火を完璧に始末し下山開始、第二展望台取付きで小休止、大タブノキ広場中で下の方から小春ちゃんの声が聞こえてくる。ロープヶ所上から見下ろすと丁度ロープを下りた所で、谷コース途中で追いつく。父親とそうた君は尾根コースを下り、大岩下の梯子取付きで二人に再会する。岩の上四兄弟下で小休止後、小谷登山道分岐点で休憩しているとそうた君達が下りてくる。

 重機道を下り、犬岩横でそうた君たちと再会し、後は一緒に小谷登山口まで下り、16時22分に小谷登山口に下山、今日の無事なる山行と新たな出会いに感謝し山に一礼する。

 金丸君へ今回も長い山行記録となり「斜め読み」となるのではと思います。ランチのサンドウィッチとおにぎり美味しかった、そして何より暖かい2度のコーヒーは格別でした。また一緒に登れる日を楽しみにしています。


小谷登山口にはたくさんの車が止まっている
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登山道整備をされている中を登る
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犬岩横からの急登部分にたくさんの人達
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分岐点より
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コショウノキ開花
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登山道のロープ
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第二展望台から
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山小屋囲炉裏 前回のレンガ敷き
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使用後は火の始末とお掃除
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山小屋北側テラスより
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小春ちゃん そうた君 ご両親
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by mutumi48 | 2023-01-23 14:28 | 双石山へ | Trackback | Comments(0)

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