8時42分に自宅を出発し、途中でコンビニで飲物と行動食のパンを購入し8時50分過ぎに小谷登山口に到着する。登山口前に5台、第二駐車場に3台止まっている。到着後に常連の蛭川さん、そして小八重氏が到着する。土曜日に登ることの多い小八重氏だが昨日は所用のため今日登ることになったらしい、蛭川さんが先行され小八重氏と一緒に登る。
9時08分に小谷登山口を出発、最初の急登を上がると平地の登山道で地表面には霜が降りており草木は冬模様、小谷両岸の山肌は冬景色でその先に人工林の杉林、その奥には双石山の北西斜面を望むことができ、一際目立っているのは三角形の北壁(岩場)そして照葉樹林帯の樹木が稜線まで伸び、その先には快晴の青空が広がっている。
薄着のためか空気がキリッと肌をさす、体が暖まるまでのしばらくの辛抱と思い、ウエアーはメリノウールインナーと速乾性と通気性の高いウイックロンのシャツ、そしてダウンベストの3枚のみ、体を温めるため少し早足で登る。
9時29分に小谷登山道分岐点に到着、ベンチにリックを降ろしここから見える風景をスマホで撮り、いつものようにラインで母親とグループ「双石山」に送る。週末常連の牟田氏が下りてきて挨拶を交わす。この時間帯に分岐まで下りてくるのには、健脚の人であれば朝6時00分前に登山スタートしなければ山頂往復はできない。
小石を一個拾い、いつものように石積み岩にのせる。次の休憩場所は岩の上四兄弟、私は定位置としている岩に腰掛け、小八重氏はご自身で登山道整備の時に動かされた腰掛けるのに丁度良い岩に座られるが、すぐに足元のぐらついている岩が気になったのか整備を始められる。
化石谷をスルーし天狗の井戸にて小八重氏と「あれやこれや」前回も書いたが天狗の井戸周りの土が穴に流れてしまい穴が大きくなっている。手前に注意喚起の大きな枯木を置くと、小八重氏から「今度、あの木とこの木にロープを結びつけて近づかないようにしておきます」とのこと、小八重氏はこれまでも山中いたる所にロープを設置され安全対策等を個人的にされている。
谷コースを選択し、難所のロープカ所取付きで休憩、一息付くだけで次の行程が楽になる。ロープを上り切った所に一人の男性、その先に女性が待っていてくれる。二人とも見かけない方達で、小八重氏から「近頃、初めてお会いする登山者が多くなったね」との指摘、確かにはじめて会う登山者が多くなっている。
昨年NHKで放映された「にっぽん百低山・双石山」そして秋からはじまった山アプリ「ヤマップ」を使ったバッジ獲得のためかもしれない。
10時30分過ぎに第二展望台に到着、リックとカメラバックをテーブルに置き、まずはここから見える宮崎平野をパチリ撮る。雲ひとつない青空で県央の稜線は見えるが、生目台団地の西側の緑の丘あたりから煙が上がり西風に流されて高松橋から平和台大橋へと流れる大淀川付近まで煙でおおわれている。
三角形の大森岳について小八重氏と「あれやこれや」、宮崎市から綺麗に見える三角形の山は高千穂峰と大森岳、ただし双石山からは荒平山が視界を遮るので高千穂峰のある霧島山系は見ることができない、
ゆきみさんが一人で登って見え、早々に「ナギちゃんはどこに居るの ? 」と聞かれる。話だと小谷登山口は車が一杯でルンゼ登山口から「ナギちゃん」を探しながら登ってきたらしい。
双石山の妖精「ナギちゃん」と初めて出会ったのは2015年1月15日で、その場でその可愛らしい表情から妖精「ナギちゃん」と名付けた、そのきっかけはイワヤ神社へ繋がる登山道脇で偶然目にしたナギノキの幼木にはじまる。
初めてナギノキを見た時、その特徴ある葉に「何?」普通の幅広い葉なのに主脈と側脈がなく葉柄から葉先にたくさんのタテ筋がありとても美しい。リックに入れていた木の葉図鑑で確認すると針葉樹に分類されるナギノキで、さらに調べると熊野信仰と一緒に全国に広まった樹木であり神様の木で別名「チカラシバ」とも言われている。
宮崎では宮崎神宮の一の鳥居からの参道両脇に植えられている街路樹がナギノキで、全国の神社境内の神木として植えられており、特に港町の神社境内に植えられたものは、その名前「なぎ・凪」により海に出る時にその枝をお守りとして持っていったらしい。
またたくさんのタテ筋の入った葉がちぎれにくいという特徴から、縁が切れにくい縁起の良い木として夫婦円満のお守りとして使われているところもあり「縁結びの木」として大切にしているところもある。
イワヤ神社へ向かう登山道で見かけたナギノキの幼木、どこかに親木があるはずだと探し回ることになり、見つけたのが象の墓場への登山道に数本のナギノキを見つけ、そのうちの一本に妖精ナギちゃんが宿っていた。ナギちゃんの周りには1対の葉を付けた芽吹いたものがたくさん、はたしてこの子達はどこまで成長できるのだろうか。
ここ数年、双石山の妖精「ナギちゃん」が徐々に知れ渡るようになった。私が名付けた山中の縁結びのバワースポットは、この「妖精ナギちゃん」と「双石山の失楽園」があり、脇を通るたびに多くの方達との縁をと願っている。ヤマップのバッジだけでなく縁の薄い方はぜひ「妖精ナギちゃん」に、そしてパートナーとより深く結ばれたい方は「双石山の失楽園」に会いにいかれてはと思う。
ゆきみさんはナギちゃんと出会ったら、そのまま下山しようと考えていたらしいが出会うことができず、ついつい第二展望台まで登って来られたようで、私の顔を見て「今日は焼き芋が食べられるの?」と聞かれる。小八重氏とゆきみさん三人で山小屋をめざして尾根筋登山道を進むことになる。今日は空気はヒンヤリとしているが風がなく気持ちの良い尾根歩きとなる。
11時00分過ぎに山小屋に到着、小屋の中には小さな女の子を含めて4人の方達がランチをとられている。挨拶を交わし「囲炉裏に火を入れても良いですか」と聞き、準備を始めるがレンガを囲炉裏外に出し、灰床にスコップをあてると灰がまきあがったため一旦作業を中止し、焚き付けとする杉の枯葉や小枝を集めにいつもの場所に行く。
杉の枯葉は山小屋の山頂側ピークの巻道を辿ったところに杉林がある。合わせて小枝を持てるだけ持ち山小屋に戻ると登山道脇のテーブルベンチに見知った女性が二人、挨拶すると「柴さん・・です」との返事がある。
確かに二人には今まで数回お会いしているが思い出せない。話では以前サツマイモを差し入れしたことのある方とのこと、小屋の囲炉裏脇に杉の枯葉を置いた時「そうだ阪本さんだ」と思い出す。
阪本さんとはここしばらくお会いしていなかったが、ご主人とは昨年第二展望台でお会いし近況について話を聞き、その後に事務所に電話をいただいていた。以前は夫妻と会う機会は多かったがここしばらくその機会がなかった。
ゆきみさんはリックを置いて「山頂まで行ってきます」と出ていかれる。
シスターコーヒーズの二人がみえ、リックから荷物の一部を出して山小屋に置き山頂でランチをとるために出発される。シスターコーヒーズの上原さんからはブログのコメント欄に「今週は何曜日に山小屋に行かれますか?」とメッセージが入っており「所用がなければ、日曜日を予定しています」と返事をしていた。
4人の方達が北側テラスに移動された後に囲炉裏に火を入れる。小屋内にはたくさんの薪がストックされており、小八重氏の話だと木曜会の人達が集めたものらしい「杉山さん達おつかれさまです」。今回は枯れた枝が多いせいか煙がさほどあがらずに囲炉裏に火が回る。
そして前回(1月6日)に登った時にシスターコーヒーズの金丸さんが持参したサツマイモが奥のベンチに置いてあり一旦自宅に持ち帰り、今日はそのサツマイモの下拵えをして他のサツマイモと一緒に持ってきている。
山小屋内で5才の女の子が囲炉裏端のベンチに腰掛けて暖をとっている。女の子の祖父が囲炉裏の火に手をかざす姿をスマホで撮っている時に、北側テラスの方から「・・さん ・・さん・・」という人を呼ぶ声が聞こえる。
私は咄嗟に人が落ちたと思い、小八重氏に「人が落ちた」と伝え二人で外に出てみると、一人の方が北側テラスの西側の斜面を覗き込んでいる。この斜面は急だが途中に樹木がたくさん生えており、その樹間を探すと下の方に人らしき姿が確認できる。
すぐに小屋内のロープを2本取り出して救助の準備、一本の柔らかめなロープを解き小八重氏が近くの樹木(2本)にビレイをとられる。救助は同行されている男性の方が持参されているスリング(輪っか状になっているテープやロープ)をリックから取り出され安全確保され、山小屋のロープ伝い滑落した人の元に降りていかれる。
この男性の方はクライミング経験者のようで、滑落された女性の方も登山経験者で自身で少し登り返されて、斜面途中で二人は合流し無事に上がってみえるが、女性の方は滑落時に頭を打たれたのか「ふらふらする」とすぐにテラスのベンチに腰掛けられる。
山小屋内が暖かいから中で休まれてはと中に入って来られベンチに腰掛けられる。容態は後頭部を打たれたようで他には右肩が回りにくいようだ。しばらく休まれてから4人で下山される。
滑落の原因は、どうも「お花摘み」に行かれたようだ、北側テラスから北東側に伸びる枝尾根先では今までに3人の方が滑落しその内2人が無くなっている。怪我で済んだ方も救助に時間がかかりその日の内に山小屋まで引き上げることができず、2月の寒空の中でレスキュー隊員と山中で一晩過ごし翌朝ヘリで救助されている。
そのため、一昨年4月にSさんが滑落し亡くなった後から「お花摘み」「雉撃ち」の場所となっていた枝尾根に下りないように侵入禁止のロープと注意喚起の案内板が設置されている。残念なことに今回はロープ脇から「お花摘み」に下り、登り返す時に誤って滑落したようだ。
大沢氏そして、金丸氏がみえ一緒に囲炉裏を囲む、大沢氏とは前回もお会いしているが、金丸氏と山小屋でお会いするのは久しぶり、以前は良く囲炉裏を囲んで双石山の岩場や県北の大崩山や比叡山でのロッククライミングの話を聞いていた。
金丸氏は双石山で事故が発生した時には必ずと言っていいほど捜索に参加されており、私も同じ時に居合わせたことが多々あった。先ほどの滑落について説明すると、子供を連れた4人の方達とは山小屋に来る途中で出会ったらしい。
今回の対応方法について考えることがあり金丸氏に聞いてみる。女性が滑落した時、仲間の方と山小屋にいた小八重氏と私がそれなりの対応することで救助できたが、その方の症状を見た時、その時点で消防に連絡をした方が良いのではと思ったということを話した。
その方達は下山されたが、下山途中で後遺症が出る可能性もあると考えると、どのように状況判断すれば良いのかと金丸氏に聞くと「とりあえず消防に連絡をして、消防の方に判断をお願いした方が良い」と指摘される。
実は前回登った1月6日の下山後の深夜に母親から電話があり、妻が電話を受けた時に私の名前をか細い声で数回呼んで電話が切れたらしい。体調が悪くなったと判断しすぐに母親の元に駆けつけたところベットの上で腹痛に苦しんでいた。
「いつも持ち歩いている痛み止めがあるから持ってきて欲しい」とのこと、自宅を出る時に姉にも連絡しておりほぼ同時に実家に着き一緒に薬を探し服用させるが一向に痛みが止まないので4時間おいて4時00分前に2回目の薬を与えたがそれでも痛みがとれず消防に連絡をした。
症状を説明したところ直ぐに救急車に来ていただくことになり、比較的近い総合病院で対応していただくことができた。諸々の処置のおかげで大事にはならずに済んだ。
この時も消防にどの時点で連絡をすれば良いのかとずいぶん悩んだ。昨年の3月6日にも同じようなことがあり、この時は高熱のため私の顔を見て「どちらさんですか」と言われた時に消防にお願いしている。
救急対応として消防に連絡するタイミングを囲炉裏を囲んで皆と話している時(13時12分)にスマホのグループライン「双石山」に山友のオッシーから「三段梯子付近で事故らしいですが大丈夫ですか?」とメッセージが入る。少し遅れて金丸氏のスマホにも同様の連絡が入る。
もしかして、滑落した女性が下山途中でふらついて怪我をされたのではと、金丸氏は事故状況を確認しなければと早々に山小屋を出発される。シスターコーヒーズの二人も早めの下山、そして私も囲炉裏の火の始末をして小八重氏とゆきみさんと三人で下山することになる。
火の始末をして土間を掃除していると隅に水の入ったバケツが置いてあり、中をみると小さなネズミが2匹浮かんでいる。あれは数年前に囲炉裏に火を入れ板間に腰掛けている時に、小さなネズミがすぐ側まで来たので食べていたヤキイモをちぎって床に置くと美味しそうに食べたことがある。
その時は最初、ネズミとは思わずに山中に生息する「ヤマネ」ではと思ったが、帰宅後調べてみるとヒメネズミであった。あの時は一匹だったが今回二匹死んでいる。でもどうしてバケツの水の中で死んでいるのか、おそらくこのネズミ達はこの山小屋の主だったに違いない、なぜ殺さなければいけなかったのか。前回は玄関横の外に排泄物の入ったバケツが置いてあり唖然とした。いろんな登山者?がいる。
下山時の尾根筋登山道はいつもになく早足となり、途中「気をつけて気をつけて」と自分に言い聞かせる。第二展望台の取付きで先に下山化したシスターコーヒーズの二人に追いつく。ここからは急な下りとなるので一息着くことにするが他の方達はそのまま下りていかれる。
呼吸を整えたところで下山再開し、大タブノキ広場手前で4人に追いつき、その後は追い越して先に下りていく。
大岩下のステンレス梯子取付きまで下りると化石広場にオレンジとブルーの制服を着た救急隊員が数名立っているのが樹間に見える。天狗の井戸上のロープカ所を慎重に下りていくと登山道を跨ぐ倒木に救急隊員に付き添われた女性が腰掛けており、やはり山小屋北側テラスで滑落した方で外見上は山小屋の時と変わっていない。
倒木を跨ぐ時に、女性に「大丈夫ですか」と声をかけるとしっかりと返事をされる。下の広い場所に下りると消防隊員から事情を聞かれ渡された紙に、氏名・住所・連絡先を書き留める。
すぐ側には女性の連れの男性が立っており、話では下山途中で嘔吐したため大事をとって消防に連絡したらしい。山小屋を出発してからは随時女性のバイタルをチェックしながら下りたらしく、山の会の代表をされている登山経験者であり職業が医者ということで適切な判断をされながらここまで下りてきたのではと思う。
しかし、どうしても滑落し山小屋で救助した時に消防に連絡するという選択もあったのではと思ってしまう。そう思う要因の一つが山小屋のすぐ近くには尾根沿いのレスキューポイントがあり要救助者をピックアップしやすい。
過去事故があった時に、今回もそうだったがまずは遠くでサイレンの音が聞こえ始め、その音が徐々に大きくなり、その後比較的早い時期にヘリコプターの音が聞こえてくるが、今回はヘリコプターが来ていないので消防隊員にそのことを聞くと宮崎県の防災ヘリではなく熊本県の防災ヘリが来ることになっているらしい。
岩の上四兄弟の取付きでいつものように小休止しながら化石広場を眺めていると一人の男性が登ってみえ化石谷の様子に驚かれ「ここで引き返します」と下りていかれる。
ここにいてもすることもないので、ゆきみさんからの「ナギちゃん」に会いたいとのリクエストに応えるため。コーヒーシスターズの2人も誘い5人でナギ林の「ナギちゃん」に会いにいく。ナギちゃんは登山道脇で登山者を優しく見守っているがその存在に気づく人はほとんどいない。
「ナギちゃん」が多くの方に愛されることを望んでいるが、あまりの可愛さに逆に知れ渡ることでの心配もある。
小谷登山道分岐点に近づく頃にヘリコプターの音が聞こえてくる。分岐点のベンチに休憩のためリックを降ろしたのが14時50分で「ひばり」のロゴの入った熊本県の防災ヘリが上空に飛んでくる。13時00分過ぎに消防に連絡が入っているので1時間50分以内で飛んできたことになる。
分岐点を出発し、犬岩の急登を下りていると三人の救急隊員が待機している。声をかけ話していると自然林の中から煙がモクモクと湧き上がってくる。そういえば化石谷で消防隊員と話した時に足元に2本の発煙筒が置かれていた。
近くにいた消防隊員が「この臭いは発煙筒のものです」と言われる。これが発煙筒ではなく煙であったら大変なこと、そういえば山小屋で一緒になった大沢氏が「私は車の車検が切れる時に古い発煙筒をとっておき、それをリックに入れている」と言われていたことを思い出す。確かにヘリにピックアップ場所を伝えるのには良い方法だと思う。
15時30分過ぎに小谷登山口に下山、駐車場にはたくさんの消防車、救急車、パトカーが止まっており、登山口前の駐車スペースには対策本部のテーブルが設置され、机上には救助要請から防災へり到着までの救助工程が時間軸で表現されている。
毎回のことだが、双石山の事故があった時には多くの人員が配置される。現地の化石谷に8人、途中の登山道に3人、登山口には警察官を含めて8人ほどが待機している。もちろん防災ヘリには少なくとも4人は乗っている。
登山口駐車場からヘリで要救助者のピックアップが確認できたのが15時34分で、ヘリが現地上空に到着してから44分間で救助したことになる。
小谷登山口前の駐車場

登山口をスタートし最初の平地

小谷登山道分岐点から 快晴

第二展望台から

山小屋北側テラスから

王家の谷 化石広場には多くのレスキュー隊員

双石山の妖精「ナギちゃん」との出会いに、ゆきみさん大満足

下山途中 小谷登山道分岐点
この時に防災ヘリが到着しホバリング

熊本県防災ヘリ「ひばり」




まずはレスキューポイントに二人の隊員が下降



要救助者と共に一人の隊員がピックアップ



登山口前に対策本部テーブル設置

第二駐車場にも消防車

残りのレスキュー隊員をピックアップ



登山口前駐車場
