8時45分に自宅を出発し、10分ほどで小谷登山口に到着、登山口前には3台の車が止まっている。日曜日にしては車が少ない天気予報では曇りのち晴れとなっているが、ここ数日続いた雨のせいかもしれない。3台の内2台は山友の車でもう1台は練馬ナンバーで、その持主らしき人が登山口周辺をウロウロしている。
エリアマップの入っている木箱を確認されるが中は空のようで、そのまま最初の急登を上ろうとしたので声をかける「エリアマップを差し上げましょうか」と、こちらに近づいて来たのでリックの地図入れポケットから各種地図を取り出し確認するが、エリアマップだけが入っていない。
「どちらまで登られるのですか」と聞くと「とりあえず天狗岩と象の墓場には行きたい」とのことで「私が案内しましょうか」と提案する。最初はヤマップの宮崎バッジを目当てに来られたのかと思ったが、この方は瀧山さんといい東京から陸路宮崎まで来られたようで、2月一杯各地を巡るらしい。
瀧山氏からいただいた名刺には「JAPAN GEOGRAPHIC」とあり、全国の天然記念物と重要文化財建造物をめぐり自身のHPで紹介されており、今日は国の天然記念物に指定されている双石山を取材に来たらしい。
双石山の稜線から北西斜面は天然記念物に指定されており、合わせて全国でも数少ない天然保護区域(特別天然記念物4ヶ所+天然記念物は19ヶ所)の一ヶ所に指定されている。このことは残念なことだが意外に地元の方達にも知られていない。
<特別天然記念物>
大雪山(北海道)
黒部峡谷附猿飛ならびに奥鐘山(富山県)
上高地(長野県)
尾瀬(福島県・群馬県・新潟県)
<天然記念物>
釧路湿原(北海道)
沙流川源流原始林(北海道)
松前小島(北海道)
標津湿原(北海道)
十和田湖および奥入瀬渓流(青森県・秋田県)
月山(山形県)
上野楢原のシオジ林(群馬県)
鳥島(東京都)
南硫黄島(東京都)
黒岩山(長野県)
大杉谷(三重県)
阿値賀島(長崎県)
男女群島(長崎県)
双石山(宮崎県)
稲尾岳(鹿児島)
神屋・湯湾岳(鹿児島県)
星立天然保護区域(沖縄県)
仲間川天然保護区域(沖縄県)
与那覇岳天然保護区域(沖縄県)
県内の重要文化財建造物については、まだ目にされていない建物として、都城市の輿玉神社内神殿と、昨年答申された延岡市の日高邸(ブリ御殿)があるが、他の建物は全て見に行かれ撮影された写真をHPで紹介されているらしい。
輿玉神社の内神殿は本殿祭壇に安置されており建物の中に建物(厨子)が保存されている。内神殿はその墨書より応永6年(1399年)に建立された中世禅宗様建築で、明治時代はじめの廃仏毀釈により破壊されそうになった(厨子)を守るために地元住民が社殿の中に隠したと言われている。
私は2018年から関わる都城市文化財保護審議会員として一度その全容を見る機会があった。桁行・梁間ともに1間の入母屋造の板葺で禅宗様の特徴である大瓶束が正面と側面にある。
<重要文化財建造物>
旧吉松家住宅(串間市)
那須家住宅(椎葉村)
神門神社本殿(美郷町 旧南郷村)
巨田神社本殿(宮崎市 旧佐土原町)
旧藤田家住宅(宮崎市 旧所在 五ヶ瀬町)
旧黒木家住宅(宮崎市 旧所在 高原町)
赤木家住宅(都農町)
高千穂神社本殿(高千穂町)
興玉神社内神殿(都城市)
日高邸住宅(延岡市)2023年9月25日指定
オッシーが到着、私の車の横に止める。実は今朝オッシーから「山小屋に火が入りますか、太鼓饅頭を持っていきます」と連絡が入っていた。瀧山氏に双石山の監視員を務めるオッシーを紹介する。
藤本氏がみえ第二駐車場に車を止められ、話を聞くと今日は石炭山から山頂までの縦走を予定されている、ただし丸野登山口と九平登山口にそれぞれ車を止めるため誰か山友が来たらとのことで、とりあえず瀧山氏とオッシーと三人で9時00分前に小谷登山口を出発する。
昨日までの雨のため地表面は濡れている、前回は霜が降りていたが今日は暖かい、出発前にすでにダウンベストを脱ぎリックに入れているので、インナーとシャツの2枚だけでなるべく汗をかかないようにとゆっくりと登山道を登っていく。
9時44分に小谷登山道分岐点に到着する。通常15分程度で登るが、今日は途中の様々な事を瀧山氏に説明しながら上ってきたため倍以上の時間がかかっている。
分岐点からの風景をスマホで撮り、母親とグループ「双石山」にラインで送る。空にはダイナミックな雲とその合間に真っ青な空が見えるが、県央の稜線は望むことができない。そういえば今朝「本日山小屋焼き芋オープンします」というメッセージは送っていない。
藤本氏が上ってみえ、その後は下山まで4人で一緒に過ごすことになる。瀧山氏より「あれは何の木ですか」と指を指され「バリバリノキです」と答える。どうやら植物にも興味を持たれているようで、次に「この時期に花を付ける植物はありますか」と聞かれる。この時期は確かに花は少ないが、サツマイナモリ、ヤブツバキ、コショウノキなどがある。
分岐点周囲の特徴ある樹木も合わせて紹介、双石山・加江田渓谷を代表するバイカアマチャと、山中では比較的珍しいリュウキュウマメガキ、ショウベンノキ、ナギノキなどなど、分岐点を真っ直ぐに進みイワヤ神社手前の急登を脇道に入り切株展望所に案内し「ここから見える景色が山中で最も開放感があります」と紹介する。
イワヤ神社に今日の登山安全を祈願し、昨年8月12日の滑落事故があった現場で「あれやこれや」藤本氏から正面の岩壁に見える逆さまの人面について説明がありなるほど・・・・、
瀧山氏、目的の天狗岩を前にカメラレンズから目が離れない。岩壁に見えるカエルと天狗の顔についてオッシーから説明があり「なるほど・・」至る所にイメージを喚起される表情を持った岩壁である。堆積岩を侵食させる風の力を見ることができる天狗の隠れ家に案内する。
常連の水窪さんがみえ挨拶を交わした後、天狗岩横の急登を上っていかれる。
天狗岩下のトラバースルートに一旦降り、ステンレス3段梯子取付きを経由し象の墓場へアブローチする。最初の急登を慎重に上り最初の平地山側にあるタフォニーの岩壁、ここはNHKの「にっぽん百低山」で私が吉田類氏と山田キヌヨさんに、岩壁に観察できる化石(生痕化石)について堆積岩と山の隆起を含めて説明した場所で、ロケ時の状況(裏話し)を含めて説明する。この周辺には登山道脇にたくさんのアリドオシがあり紹介する。ヒメアリドオシとアリドオシが混在している。
ナギ林の双石山の妖精「ナギちゃん」を紹介した後に象の墓場に入る。
墓場ではその名称についてその由来を聞かれ、私が50年以上前に聞いた内容について説明する。その後は初めての方を案内した時に恒例となっている岩壁に宿る「象」の姿を探してもらう。
象の墓場から王家の谷にアプローチするため、東側の垂直の岩場ロープヶ所へ向かい、久しぶりにロープと木の根を掴み岩壁に掘り込まれたスタンスを頼りに下り、そこから平地までの急斜面に張られた補助ロープを片手に慎重に下りる。
この場所は、私が山中で三ヶ所注意する場所の一つとなっている。垂直の岩壁を下りた後から平地までの斜面が特に注意を要する場所となっており、今回ロープが張られており以前とすると随分に安全にアプローチできるようになった。
王家の谷に入り、次の分岐点で尾根コースを選択し一旦大岩取付きまで上り小休止する。次の休憩場所はカズオチェアー上で一息付いて12時10分に第二展望台に到着する。いつもとすると2時間近く遅い行程、テーブルベンチにて休憩していると第三展望台方面からトレイルランナーの男性が一人みえ挨拶を交わす。それにしても今日山中で出会う登山者が少ない。
尾根筋登山道を進んでいると山友の菊池氏と出会い、次に桜川さんと出会いそれぞれに挨拶を交わす。
山小屋に12時45分頃に到着、早々に囲炉裏に火を入れる準備をする。山小屋には小枝を含めてたくさんの薪が置いてあり、少し多めに持ってきた新聞紙で火を付けようと思ったが、やはり杉の枯葉があった方が良いと思い、いつもの場所に杉の枯葉を拾いにいく。
昨日までの雨にもかかわらず比較的乾いた杉の枯葉があり、囲炉裏で新聞紙、杉の枯葉、小枝、薪と積み重ね火を付けるとどうにか囲炉裏に火が回る。
鉄網の上にサツマイモを並べる、今日はシルクスイートとやまだいかんしょの2種類、昨年10月から友人に頼みまとめ買いした串間市大束のやまだいかんしょばかり食べていた。
たまには違った種類のサツマイモをと思い、メインをシルクスイートでやまだいかんしょは小イモとする。ねっとり系のシルクスイート、ほっこり系のやまだいかんしょ、同じサツマイモでも品種の違いで味覚が変わるがそれぞれに美味しい。4人でそれぞれを半分づつ食べる。
14時・分に囲炉裏の火を始末し山小屋を出発しようとした時に2人の女性と1人の男性が登ってみえる。すでにリックに入れていたヤマダイかんしょを取り出し「小屋の囲炉裏で焼いたサツマイモですけど食べませんか」と渡す。女性2人は久留米市から、男性は山口県から来たらしい。この焼き芋が双石山の印象をより深いものにしてくれるだろう。
山小屋に入った3人に玄関建具の施錠方法を説明し4人で下山スタートする。下山途中で紅色が消えてしまったクチベニダケを紹介、第二展望台に立ち寄りテーブルベンチで「あれやこれや」。
下山は谷コース、岩の上四兄弟取付きで小休止後、空池に立ち寄る。滝山氏は場面ごとで写真、動画、そして音を取られており、ここ空池でも音のない音を録音されている。話では高性能の録音機らしく、宮崎に来る前に熊本の鍾乳洞で水面に落ちる水滴の音を取られたらしい。動画に関しては8Kとのことで、どの程度のものなのか想像もつかない。
空池を登り天狗の背中を観察「これは梵字に見えますね」、そう天狗の背中は正面とは全く別な表情をしており興味深い。宮崎バッジ獲得のために天狗岩まで登る登山者が増えているが、その背中を見ずに帰るのはあまりに勿体無い。ただし背中を見るためにはそれまでの緩やかな登山道ではなく、木の根とロープを頼りに急登を上らなければいけない。
天狗岩下からステンレス三段ハシゴ取付きを経由して分岐点をめざし途中の「双石山の失楽園」「親父の木」を紹介する。「双石山の失楽園」についてその名前の由来を説明すると、江戸時代の心中に近い姿ですねとのこと「なるほど・・・・」。
分岐点のベンチにて休憩し、親子岩までは重機道を辿る途中から見える双石山北西の山肌、山小屋のある稜線等について説明する。
17時00分頃に小谷登山口に下山する。本日の無事なる山行と新たな出会いに感謝し山に一礼する。
小谷登山道分岐点より

第二展望台より

第二展望台 下山途中

藤本氏 柴 瀧山氏 オッシー

▼ オッシー撮影の写真 ▼