天狗岩の裏側から空池に下り、チョークストーンの下を通ると、私が「王家の谷」と呼んでいる登山道となる。そのまま登ると「尾根コース」「谷コース」との案内板が見えてくる、初めての方はほとんどが尾根コースを選択する。
尾根コース最初の取付きはステンレスハシゴ、そしてロープヶ所とつづき、ここを上がると大岩が見える。大岩手前には2〜3歩で渡れる木製の橋があり、それを渡ると大岩へ登るためのロープが下がっており、ここを登ると大岩天辺へアプローチできる。
それまで展望の全くない第一展望台、そして暖帯林の見晴らしのない樹間を登ってきたが、大岩天辺に上がると一気に視界が広がり、宮崎市街地から尾鈴山から西へ伸びる県央の稜線、そして日向灘(太平洋)を望むことができる。
ここでの「道迷い」は、登山者が展望を楽しみロープを下りた後、渡ってきた木製の橋を渡らずに反対の方向へ行ってしまうことである。私も以前ロープヶ所取付きで休んでいるときに、反対方向に進んでいった男性を見かけた。
そのルートには、大岩下の隙間(4〜5人は泊まれるほどの広さがある)があり、それを見に行ったのか、よほど双石山を熟知しており、その先の非常にマニアックなルートを下りられたのかと思った、そうでなければ引き返してくるだろうと思い、待っていたが一向に戻ってこない。正直その日は山中ずーと、その人のことが気になった。後で山友から聞くことになるが、その男性は大岩の下を一回りし無事に尾根コースを登って行ったらしい。
「道迷い」をしないためには、大岩から尾根コースに進む木製橋をまた渡り、そのまま山に登っていくことになる。ここから15分ほどが数カ所のロープ、そして木の根を頼りに体全体を使って登るルートになり、初めての人で、登りきった第二展望台で「もう尾根コースは下りたくない」と言われる方がいる。
2023年8月12日に天狗岩東側の登山道近くで滑落により亡くなられたN氏が、どうして滑落したのか? 今となってはその原因を明確に知ることはできないが、私なりの推測し二度と同じ事故が起きないように願う。
「双石山 2023年9月24日 山小屋往復」の文中より
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山友の山本さんが登ってみえ挨拶を交わししばし談笑、山本さんは近々8月12日に滑落による死亡事故のあった現場に、宮崎市役所の担当課と森林監督署の関係者を案内することになっている。それではと現地を案内し当日の現場状況について一緒に登り詳しく説明することになる。
続いて山友の吉田氏が登ってみえる。加江田渓谷でのガイド養成講座に参加されている吉田氏からはお会いする度に興味深い話を聞くことができ楽しみにしている。久しぶりに登ってきたという女性の方も含めて5人でイワヤ神社経由で事故現場に行く。
前回まで事故現場山側の崖の上にあったN氏の物と思われる赤いタオルは、今週21日(木曜日)にクライマーのS氏が回収してくれた。その時の写真が山友オッシー 経由で送られてきた。私が気になっていたN氏の帽子も近くにありタオルと一緒に写真に写されていた。
事故当日に現場に駆けつけ、
亡くなったN氏と言葉を交わした時に、彼は帽子を被っていなかったので、崖の上のどこかに落ちているのではと思っていた。その場所からN氏がどのようなルートを辿ったのかを検証できるのではと思っていた。
タオルと帽子の落ちていた所は、通常登山者が登る所ではなく、上れても下りるのが大変困難な場所である。崖の天辺は平な場所となっているようだが、その山側には人の背丈以上の垂直の岩壁があり、その上はおそらく谷筋となっていると思われる。N氏はその上の谷筋で滑りタオルが落ちていた岩場にバウンドして落ちたのではと思う。
でも、どうしてその谷筋に入り込んだのかが今となってはわからない。ただし今後その谷筋に入り込んでしまう登山者がいないとも言えない。そのためにも何が原因なのかを検証し、その対応をしなければ今後同じ場所での事故は防ぐことができない。
天狗岩取付きに一旦登るが、天狗岩右側の急登は使わずに一旦ロープカ所を降りてステンレス三段梯子取付きに向かう。取付きに近づくと聞き慣れた声がする。そう師匠こと小八重氏と常連で同じグループラインの大住さんの二人、話を聞くとルンゼ登山口から入山し象の墓場経由で来られた。挨拶を交わししばし談笑する。山本さんはここで下山され、その後第二展望台まで5人で登る。
途中大岩取付きに立ち寄り、小八重氏から聞いていた今月設置された道迷い防止のためのトラロープを確認する。合わせてその先に赤テープが下がっていないか確認のため大岩下の平地まで下りてみる。過去数人の方より大岩に登った後に道迷いを起こしたと聞いている。
もしこの場所で登山道の目印となる赤テープが下の方にあれば、初めての登山者は登山道と勘違いしそちらに下りてしまう(赤テープは登山道の目印)。大岩下の平地で目をこらし下の谷筋を見ていると、踏み跡があり、その先にピンクのリボンが下がっている。
山中には一般ルート以外に個人的に付けられたピンクテープがあり、そのルートは初めての登山者にとっては危険な場所が多い。そのルートをよく知っている登山者にとっては問題ないが道迷いの原因となる。ぜひピンクリボンや赤テープを一般登山道以外で見かけた時には外して欲しい。
大岩下の平地より谷筋を見る

木と木の間に下がっているピンクテープが見える N氏の車は丸野駐車場に止めてあったので加江田渓谷遊歩道にある登山口から双石山に入山したと思われる。2023年9月24日以降に常連者達が、滑落した谷筋でN氏が滑ったのではという痕跡を確認している。
後はどこからこの谷筋に入り込んだかであるが、一番可能性の高い場所がこの大岩取付きであり、事故翌月に取付き下を確認すると上記写真の示すとおり樹間にピンクテープがある。赤系色のテープは登山道の道標が基本であり、登山者はこのテープを頼りにしている。おそらくN氏はここから谷筋に下りて行ったのではと思う。
もう一つの疑問は、なぜ加江田渓谷側に下山しなかったのかということである。以前2回ほど第二展望台での経験であるが、加江田渓谷側から登ってきたという登山者と出会い「はじめてきたので天狗岩を見たい」ということで、一緒に天狗岩を見てその後は小谷登山口に下り丸野駐車場まで車で送ったことがある。
宮崎市内在住のN氏、はじめての双石山だったのか、それとも別に目的があったのか、今となってはわからないが、とにかく登山には事前の情報が必要であること、合わせて勝手に登山道以外に赤系色のテープを設置しないこと。