天狗岩右側の急登を慎重に登り、上で小休止していると隙間から下山途中の山友のI倉さんが姿を現ししばし談笑する「柴さんここ二、三回ルメットをかぶられているけれどどうしてですか」と聞かれ「二、三年ほど前からヘルメットを被った方が良いと思っていたのですが、なかなか実現できずそのままだったのですが、5月のKさんの滑落事故死がきっかけとなりました」と説明する。
空池の底に下りてチェックストーンを抜けて王家の谷に入る。次の休憩は岩上四兄弟の定位置ではなく手前の風穴前の岩に腰掛けて休憩する。座ると風穴から噴き上げる冷気をより感じることができる。
ここで岩に腰掛けてしまうとこの時期なかなか先に進めない。そうこうしているうちに空池の方から登山者の声が聞こえてくる。王家の谷入口付近まで二人で来ているようだが姿を見せず、そのまま引き返される。もしかして象の墓場へ行くためにステンレス三段梯子を下りてアプローチしようと思っていたのかもしれない。
王家の谷に戻ると下山途中の女性に出会い挨拶を交わす。その時落石なのか大きな音が谷に響き渡り、上から男性が下りてくる。もしかして落石を発生させてしまったのか? もし間違って落石を起こした場合は大きな声で「ラク・ラク」と数回叫ぶのが登山者の常識となっている。すれ違った男性は女性ほど山慣れた格好はしていなかった。
尾根コースを選択し、10時55分に大岩を正面に見ながら小休止、次の休憩はカズオチェアー上部の定位置、尾根筋のため風が吹き抜けて気持ちが良い、突然雷が落ちたような音が谷コースから聞こえる。以前探検隊のメンバーが谷コースで大木が突然倒れる場面に遭遇したことがあるという話を思い出す。
ここから第二展望台まで10分ちょっとだが、尾根コースと谷コースの分岐点までは急登となり設置してあるロープと岩壁の隙間に張った木の根を頼りに慎重に登る。声には出さないが「三点確保、三点確保」と念じながら、分岐点に着くと最後のロープカ所を過ぎて尾根筋の登山道となり、少し進むと第二展望台と山頂へのルートとの分岐点となる。
11時14分に第二展望台に到着、早々にテーブルベンチにリックとカメラバックを降ろしヘルメットを脱ぎ、スマホでベンチに腰掛けたままで北側にある標柱を入れて宮崎平野を撮る。
リックから持参したカキ氷を取り出し袋の端をナイフで切り、スプーンで少し溶けかかったカキ氷を食べる。いつもはランチ前に行動食を口にしないが小腹が空いたのか持参した菓子パンを2個食べる。
登山靴を脱ぎ、ベンチに仰向けになりカキ氷と一緒に入れてきた氷の袋をおでこに乗せて目を閉じる。時折吹き上げてくる風が気持ち良い。
第二展望台取付き辺りなのか人の声が聞こえてくるが展望台に上がってくる雰囲気はない。10分ほど目を閉じていおり、ふと「そうだ山小屋では高瀬氏が待っているかもしれない」と思い起き上がり登山靴を履き、山小屋をめざしてスタートする。
展望台取付きには10人ほどの若者が休憩している「上の展望台に登ればベンチもあり、山中で一番景色が良い場所ですよ」と声をかけると「まだ登ってくる仲間がいますのでここで待ってます」と返事がある。
すでに開花時期は過ぎているがイチヤクソウを見るために登山道を外れ山中に入る。新たな小さな新芽が数株出ておりこれからが楽しみ。
登山道に戻り先に進み途中で樹木に着生しているナゴランを観察する。同じ幹に3株着生しており2株が開花している。さらに進みスダジイの巨木を見上げるとそこにも開花したナゴランがある。
写真を撮っていると、先ほど第二展望台取付きで言葉を交わした若者達が登ってくる「何かあるのですか」と聞かれる。山中の希少植物については人に教えないようにしているが、岩壁の高い場所や高木に着生しているものに関しては多くの人に情報提供しており「あそこにナゴランが花を開いていますよ」と伝えると、みなさん「どこどこ」仰ぎ見ている。
若者グループが進んで行った後、山友の吉田氏が手に木材を抱えて現れる。通り過ぎた樹木に着生しているナゴランを見るのを忘れたらしく「下山時に見られますよね」と二人で山小屋をめざして進む。
加江田渓谷へのルートの分岐点を過ぎて木の根のステップを慎重に通り過ぎ、尾根筋に上がると、先ほどの若者グループが腰掛けて休憩している。
余計なことと思いながら「余計なお世話ですが、この場所は多くの登山者が道迷いをする場所ですので、今後、小グループ、または個人で登ってこられ山頂から下山途中、この場所では特に気を付けてください。今年の春も福岡県から来られた9名グルーブで山慣れしたリーダーが先導していたにもかかわらず、本来案内板表示の通り左に下りなければいけないのに尾根筋をそのまま真っ直ぐに進み、加江田渓谷側の深い森の中に入り込んでしまったことがあります」
ヤマモモのピークを過ぎ下り坂途中で、山小屋の登山道側ベンチに座った高瀬氏の姿が見え手を上げて「お疲れ様」と声をかける。
途中山友の岩倉さんから「名前が思い出せないけれどグループラインメンバーの男性の方がコンクリートの基礎(柱脚)を抱えて上がっていました」と聞いていた。
ベンチにリックを降ろし三人で談笑、高瀬氏の話では山小屋まで柱脚を持ち上げた後で山頂往復をしてきたらしい。二人は今週金曜日に加江田渓谷を散策したらしい。この時期渓谷の遊歩道は風が抜けるのだろうか? 渓谷の水に浸かるのが目的であれば涼むことになるが遊歩道散策だけでは暑そう。
高瀬氏から溶けかけたキューブに入ったアイスをいただく、硬さはないが冷たくて甘く美味しい。三人でランチタイム、私は定番のザルソバ、高瀬氏も定番なのか手作り名店のお稲荷さん、吉田氏は自ら手作りのお弁当をそれぞれいただく。
山友のオッシーからラインでメッセージがあり、合わせて写真が送られてくる。今回の荷上げ材料の使われ方をスケッチ化したデーターで、山小屋の登山道側に下屋を作り軒先に雨樋を設置して雨水タンクに水が貯まるようにするらしい。
スケッチをまじまじと見ながら、既存の雨樋を再利用し雨水タンクに雨水が入る位置にずらす方法もあるのではと思ってしまう。
常連の横山氏が木材を担いで登ってみえ、「お疲れ様です」と声をかける。横山氏はいつも山頂往復されているが、今日はよほどきつかったのか「今日は山小屋往復とします」と言われベンチに腰掛けられ、しばらくして「先に下ります」と下山される。
14時12分に下山開始し三人で山小屋を出発、途中登山道脇の樹木に着生するナゴランが丁度陽射しを受けて光輝いている。二人はスマホで撮影、私は少し離れた場所から二人を撮影する。
第二展望台に立ち寄りテーブルベンチにてリックを降ろし休憩し、15時16分に展望台を下山開始する。谷コースを選択し途中風穴で小休止し、次は小谷登山道分岐点のベンチ、16時20分過ぎに小谷登山口に下山、本日の無事なる参考と出会いに感謝し山に一礼する。